BCP策定

美容室が考えるBCP策定(2)業務の優先順位付け、取捨選択

美容室が取り組むBCP策定(2)業務の優先順位付け、取捨選択

前回の記事では、BCP策定のために知っておきたい考え方、策定の手順などをお伝えしました。
それを踏まえ、次のステップに進みます。

この記事では、「業務の取捨選択」と題し、把握した店舗業務の優先度づけ、取捨選択プランを考えることがメインです。

BCP策定のセカンドステップ 業務の取捨選択

業務の取捨選択が必要な理由

新型コロナウイルスの流行で痛感された方もいらっしゃるかもしれません。
感染症の流行時、大きなダメージをうけるものの一つに「人的リソース」があげられます。

端的に申し上げるならば、様々な理由で出勤できない人が増え、通常通りの業務を行うには人不足に陥ってしまう、ということ。
ウイルスに感染してしまった、家族が感染し濃厚接触者指定を受けた、という直接的な感染に結びつくものから、小学校や幼稚園・保育園が休園となってしまい出勤できない、店舗内の過密状態を避けるため出勤する従業員を減らさなければならない、など。
ここに挙げたものはほんの一部ですが、他にも様々な理由で感染症拡大時は人的リソースがひっ迫してしまいます。

人不足になると、「いつもどおり」のサービス提供が難しい場合もあるでしょう。
感染症拡大防止の観点からも、リスクの高いサービス提供は中止せざるを得ません。

そうした事態を想定し、あらかじめ業務に優先度をつけ、優先度の高い業務に絞って提供する姿勢を作っておくために、業務の取捨選択が必要なのです。

業務の優先度づけをしよう

前回行った「経営の現状把握」において、業務の洗いだしを行いました。
洗い出した業務を、以下の通りに分けます。

1) 利益を生む業務・サービス
2) 直接的に利益に結び付かない業務
3) 店舗のイメージや顧客ニーズにこたえるために必要な業務(1・2と重複可)

1)の利益を生む業務をさらに、収益の観点から影響が大きいもの順に並べます。
2)は、掃除や消毒など、店舗経営に必要な業務が多いと思いますが、最低限やるべきこととそうでないことに分けられるのではないでしょうか。
3)は、回数が多いメニューやニーズなど、日ごろのお客様とのコミュニケーションで得られるものを参考に、ランク付けするとよいでしょう。

収益の観点でダメージが大きいものは優先的に継続する業務に、逆に一か月の注文数が極端に少ないものや、あまり収益のないものは優先度をさげます。
頭の中では収益の大きい業務、小さい業務、ニーズのあるなしなどをわかっていても、可視化することで全体を見て判断することができます。

代替手段も視野に

ただ業務を絞るだけでは、収入源が減ってしまうのみです。
例えば、店舗内の物販は一時的に休止しオンラインストアに移行する、など代替手段も検討しましょう。

業務を絞るタイミングを決めておく

ここまでで、一通り業務を優先度順にならべることができたのではないでしょうか。
最後に、「世の中がどうなったら取捨選択の判断をするか」、タイミングを決める必要があります。
決めておいてもそのままでは意味がありません。
世の中の状況に応じて、業務絞り込みを判断するタイミングを定めます。

感染症の拡大時は、その拡大状況に伴ってステージが設定されています。

ステージ1:感染者の散発的発生
ステージ2:感染者の漸増(※次第に増えること)
ステージ3:感染者の急増
ステージ4:爆発的な感染拡大
出典:内閣官房

ステージ3・4は病床占有率やPCR陽性率、10万人当たりの新規感染報告者数など、6つの指標から判断しています。
これらを毎日追うことはなかなか難しいですが、ニュースなどでこうした情報を得て

・いつ
・誰が
・なにを判断するか

を決めておきましょう。
例:ステージ3になったら、優先度の低い●●と××のサービス提供停止を判断する

自店の所属する自治体や、地域の情報を参考にしても良いですね。
厚生労働省のページから、定期的に6指標を確認することができます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00035.html

まとめ

・業務の優先順位をつける
・代替手段がとれる業務の目星をつける
・いつ、業務の絞り込みを行うのか 誰が判断するのか決める

ファーストステップがもれなく行われていれば、さほど難しいことではありません。
日ごろの店舗業務を振り返るという意味でも、一度行ってみたほうがよさそうです。

なお、感染症、とりわけ新型コロナウイルスを想定した場合のBCPとなっており、状況によっては異なる判断が求められる場合もあります。