新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかりません。
Googleの感染者数予測によれば、今後28日間で最大10万人近い陽性者数が記録されるとしています。(2020/11/25現在)
今まで通りの「基本の感染対策」を徹底することはもちろんですが、それだけでは不安というのが正直なところ。
そこで注目したいのが「口腔ケア」、つまり歯みがきです。
なぜ「歯みがき」が「感染症対策」?
歯みがきと細菌・ウイルスの関係
一見、あまり関係がないことのように思える歯みがきと感染症対策。
しかし、新型コロナウイルス流行以前から、口の中の健康と感染症の関係について多くの研究結果が報告されています。
口の中には、多くの細菌が存在します。
人体に対して影響がない細菌も多く存在しますが、ものによっては悪影響を及ぼすものも。
その細菌が粘膜に付着することで感染を引き起こします。
そして、普段この口内での感染を防いでいるのが唾液です。
正確には唾液に含まれる「抗体」が、細菌・ウイルスを含む異物を排除し口の中を浄化する作用を持っています。
口の中がきれいに保たれていれば、侵入してきた細菌と唾液の抗体が結びついてウイルスを排除、粘膜への付着を防いでくれます。
しかし、歯垢などの汚れが口の中に多く存在すると、唾液の抗体は汚れに付着します。
抗体の数にも限度があるので、汚れが多いと侵入してきた細菌を排除できなくなってしまいます。
排除できなかった細菌は粘膜に付着し感染を引き起こす可能性があるのです。
また、歯周病を発症している場合、歯周病菌が特定のウイルスを増殖・活性化させることも報告されています。
唾液の抗体に、侵入してきたウイルスを排除してもらうために口の中の歯垢や歯周病を減らす必要がある、ということがわかります。
歯垢残り、歯周病を防ぐために「正しい歯みがき」が重要なことは、言うまでもありません。
感染症発症を防ぐことができたという報告
実際に、口腔ケアを継続したことでインフルエンザの発症を抑えることができたという報告も存在します。
免疫力が弱い要介護の高齢者に専門的な口腔ケアを行い続けたところ、口腔ケアを行っていなかったグループと比較してインフルエンザの発症が抑えられたということです。
その他、がん患者の手術後の合併症(肺炎など)を抑える効果があった、という報告もあります。
つまり、口の中の健康と感染症は大いに関係があるということです。
新型コロナウイルスに歯みがきは有効か
これまでの研究から判明している感染経路などを考えると、一定の効果がある可能性がある、とするのが歯科医師の見解です。
新型コロナウイルスは、ウイルスに感染した人の飛沫を吸い込んだり、手にウイルスが付着したまま食べ物などに触れ、それを飲み込むなどして感染することがわかっています。
マスクで鼻や口元を押さえてはいるものの、マスクそのものにそうした飛沫の侵入を完全に防ぐ効果がないことはすでに研究から明らかになっています。
そうした、何らかの理由で口の中に侵入してきたウイルスであるならば、他のウイルスと同様に唾液の抗体を使って感染を防げるのではないか、と考えるのが自然です。
しかし、新型コロナウイルスは今も世界中で研究が進められている最中です。
これまでの研究で分かったことも多くありますが、全容解明にはまだ時間がかかります。
そのため、「絶対に歯みがきが新型コロナウイルス対策として有効」と言い切ることはできません。
インフルエンザと新型コロナウイルスの併発という最も避けたいリスクの対策として、また日々の衛生管理の一環として導入することで副次的に効果を得られる可能性があります。
免疫力が上がることは確かです。
新型コロナウイルス対策とあわせて、従業員の健康管理という観点から自社・自店で取り入れてみるとよいでしょう。
感染症リスク対策としてとりいれる歯みがき
実際に、手洗い・うがい・検温などの日々の衛生管理の一環として歯みがきを取り入れるのが現実的ではないでしょうか。
また、歯みがきを「したつもり」になっているだけでは、リスクを回避できているとは言えません。
定期的な歯科医院での専門的な口腔ケアを行うことで、口の中をきれいに保ち続けられるのです。
歯科医院の受診推奨、場合によっては援助制度などを検討しても良いかもしれません。
セルフケアの方法
とはいえ、忙しくてなかなか歯科医院に足を運べない方も多いのではないでしょうか。
日本歯科医師会では、セルフケアの方法も提示しています。
ポイントは、
1) 歯垢を残さず落とす
2) 舌をきれいにする
3) 唾液の分泌を促す
です。
特に、歯みがきというと「歯垢を残さず落とすこと」に気が行きがちです。
ここで注目するべきは舌みがき。
舌には「舌苔(ぜったい)」という汚れが付着しています。
これが細菌の塊で、唾液の抗体の働きを妨げてしまいます。
舌のブラッシングを丁寧に行うことを、歯科医師も推奨しています。
また、舌苔は口臭の直接的な原因ともなります。
マスクをしているとはいえ、至近距離での接客が必須となる美容師にとって口臭は大敵。
感染予防対策とは別の側面でも、歯みがきによる効果を十分に期待することができます。
まとめ
感染が急拡大していく中で、これまで通りの感染対策では不安だという方も多いのではないでしょうか。
1人1人の自衛意識が大きく感染拡大に作用する中で、少しでも簡単に取り入れられる策を徹底することが、感染者増を抑えるための近道です。
これまで通りの手洗い・うがい・マスク着用など基本的な感染対策を徹底しながら、プラスアルファの施策を取り入れていきましょう。
参考
・「口腔ケアで免疫力アップ!」日本歯科医師会 新型コロナウイルス感染症について
https://www.jda.or.jp/corona/Oral-care-Immunity.html
・“感染経路”の一つ 口腔内を清潔に保つための「オーラルケアのススメ」風邪・インフルエンザ・ウイルスが気になる季節に向けて(アットプレス・ライオン株式会社)
https://www.atpress.ne.jp/news/235564
・お口のケアと感染症発症の関連性(サンスター株式会社)
https://jp.sunstar.com/infection/pdf/infection01.pdf
・歯みがきをしっかりやれば、インフルエンザや新型コロナを予防できる?歯科医の答えは(AERA dot.連載「歯科医が全部答えます!聞くに聞けない“歯医者のギモン”」)
https://dot.asahi.com/dot/2020110700011.html