BCP策定

美容室が考えるBCP策定(4) 定着と改善

美容室が考えるBCP策定(4) 定着と改善

前回までは、BCPを策定する際の流れを、例を挙げながら見てみました。
しかし、BCPは策定して終了ではありません。

地震や火事が起きた時に避難する経路、方法を確認する「避難訓練」を定期的に行うのと同様、BCPも訓練、改善を繰り返す「運用」のフェーズを経て、作り上げていきます。

作ったBCPを従業員に周知しよう

周知と訓練を計画する

せっかく苦労して作ったBCPを、自分以外の従業員が知らなかったら、いざというときに役に立ちません。
定期的な周知、訓練を経て、初めて実用的なBCPとなります。
まずは、どのくらいの頻度でどのような訓練を行うのかを定めましょう。

周知・訓練の内容を決める

以下の内容を従業員全員が理解できていることが理想です。

作った理由
なぜBCPが必要なのか
いつ
どんな時
誰が
どんな行動をとるべきか

感染症の拡大が身近な問題である今、まさにBCP周知のチャンスであるといえます。
具体的なシチュエーションを思い浮かべながら教育を受けられ、各々の理解も深まりやすいためです。
モノが不足している状態での施術訓練や、代替手段を設定した場合の施術方法などを訓練しておくと、いざという時に役に立ちます。

BCPの見直し

周知・訓練の後は見直し

周知や訓練を行ったら、従業員からフィードバックを貰いましょう。
問題や改善が必要な点について、なぜそう思うのか、原因はなぜなのか、どうしたら解決するのかを考え、BCPの改善を行います。
もしかしたら、日々の業務を改善したほうが良いかもしれませんし、新しいアイディアが生まれるかもしれません。

店舗の変化に伴う見直し

日々、営業状況は変わります。
人員の変化、周辺環境の変化、情報環境の変化や提供メニューの増減など、BCP策定時には想定しきれなかった「変化」はいつか必ず発生します。
数か月に1度、自社を取り巻くあらゆる状況を見直すことでBCPに作用することはもちろん、日ごろの経営のかじ取りも柔軟に対応することができます。

BCP策定の補助金・助成金を活用して

BCP策定の補助金・助成金を活用して
ここまで大きく、感染症の拡大を対象としたBCPの策定の流れを確認しました。
見てきただけでも、備蓄を増やす、情報環境を整える、場合によっては人件費や設備投資…と、実際のBCPの策定と実行にはお金がかかります。

さらに地震などの自然災害を想定した備蓄や水害対策用品、サイバー攻撃を想定したITセキュリティの強化、テロ対策など、すべてのBCPをもれなく策定するとなると時間もお金も必要となり、一気に策定の優先度が下がってしまうのではないでしょうか。

そこで活用したいのが、自治体の補助金・助成金です。

例えば東京都の場合、諸条件をクリアすると最大1,500万円の助成を受けることができます。
備蓄を増やす、設備投資など、具体的な策を実現するための費用に使える可能性があるほか、コンサルティングなどでより専門的な案を策定する際にも条件によっては助成の対象となります。
※東京都の場合、都が認定する方法でBCPを策定する必要があります。

東京都以外の各自治体でも独自にBCP策定に対する補助金・助成金制度を設けていますので、自社の所属する自治体の情報を確認してください。

まとめ

実際のBCPは、先述のとおり感染症以外の様々な経営リスクに対しても策を立てる必要があります。
現時点では日本を含め世界中で感染症の拡大が話題になっていますが、経営リスクとされる不測の事態はいつ発生してもおかしくありません。
BCPを独自に設定するにせよ、業者に依頼するにせよ、日ごろの経営状況を正しく認識し、発生しうる問題に対して策を考えていくのが基本です。

中小企業において、業務停止や休業は企業の存続に大きな影響を及ぼします。
不測の事態に備えることで、長期的な事業継続を実現しましょう。